書評・要約

「天路の旅人」の書評・要約まとめ【2022年個人的No.1書籍】

2022年12月31日

2022年最後に読んだ本が今年No.1書籍となりました。それが沢木耕太郎著「天路の旅人」です。

沢木耕太郎といえばバックパッカーのバイブル「深夜特急」。その「深夜特急」の面白さに匹敵、いや超えてくるくらいの面白さでした。

個人的な話として、もう書評系記事はやめようかなと思っていたのですが、「天路の旅人」についてはどうしても書きたいと思い、今回記事にまとめています。

それでは、下記から天路の旅人について個人的感想多めでまとめていきます。

「天路の旅人」の基本情報

「天路の旅人」の基本情報

「天路の旅人」の基本情報について見ていきます。


書名 :天路の旅人
著者 :沢木耕太郎
出版日:2022/10/25
出版社:新潮社

続いて著者の「沢木耕太郎」さんのプロフィールが以下の通り。

沢木 耕太郎(さわき こうたろう、1947年11月29日 - )は、日本のノンフィクション作家・エッセイスト・小説家・写真家。

ルポライターとして1970年(昭和45年)、『防人のブルース』[3]でデビューし、1979年(昭和54年)には演説中に刺殺された日本社会党委員長の浅沼稲次郎と、その犯人である少年の交錯を描いた『テロルの決算』で第10回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した。以後、スポーツや旅などを題材にした多数のノンフィクション作品、小説、エッセーなどを発表している。
引用:沢木耕太郎 - Wikipedia

深夜特急を読んでから大好きになった作家さんです。個人的には小説よりもノンフィクションの印象が強く、この「天路の旅人」もノンフィクション作品に仕上がっています。

「天路の旅人」の要約まとめ

「天路の旅人」の要約まとめ

いつもは各書籍の簡単な要約をまとめていますが、今回は僕が「天路の旅人」の中で気になったフレーズをいくつか引っ張り出し、個人的な感想を書いていきます。

本文の内容を引用しているので、ネタバレが嫌な人は飛ばしてください。

沢木耕太郎式インタヴューの心得

私の流儀として、かりにそれが仕事の場合であっても、最初に会ったときには、いわゆるインタヴューをしない。そのときの雰囲気のまま、流れる方向に流され、気ままな会話をする。そして、いちど会ったという親しみを培ったあと、二度目にあったところから本格的なインタヴューを開始するのだ。

なるほど。まずは、普通の会話をとおして、自分を知ってもらいつつ、親しみを持ってもらう。そして、2回目以降から本格的に話を深掘りしていくということですね。

たしかに、最初から本格的なインタヴューされると、相手も臆して深層の部分を話さないかもしれないですしね。ましてや素性もわからない相手に本音を話すのは難しい。

沢木耕太郎の長年の取材歴で培ったノウハウなんだろうと思います。

旅を通して気づくこと

西川は歩きながら思っていた。旅に出ると、生活が単純化されていく。その結果、旅人は生きる上で何が大切なのか、どんなことが重要なのかを思い知らされることになる。火がおきてくれれば湯が沸き、太陽の光を浴びれば、体が暖かくなる。たったそれだけで幸せになる・・・。

旅って生活の無駄という無駄を削ぎ落としたものだから、生きる上で最低限必要なことが見えてくるんですよね。

僕も先日タイに一人旅にいったときに同様のことを思いました。特にタイで泊まったドミトリーで感じましたね。

そのドミトリーは本当に必要最低限のベッドと、他は共同のシャワー・トイレのみ。でも、これで生きていけるなと思ったんですよね。

普段は東京のちっちゃいマンションに一人暮らししている僕ですが、ドラム式洗濯機だとかスマート家電だとかテレビだとかがなくても生きていける。そうやって自分の価値基準を知れるのは旅の醍醐味ですよね。

困難のさなかが一番楽しい

もしかしたら、困難を突破しようと苦労をしているときが旅における最も楽しい時間なのかもしれない。困難を突破してしまうと、この先にまた新たな困難が待ち受けているのではないかと不安になる。困難のさなかにあるときは、ただひたすらそれを克服するために努力すればいいだけだから、むしろ不安は少ない、と。

これも同意です。何事においても困難を突破しようとしているときが一番充実感があります。

これも実体験からなのですが、大学1年生~3年生まで文化祭実行委員をやっていたとき、苦労したこともありますが、何にも代えがたい充実した日々を過ごしていました。

一方で、大学3年生まで務めていた文化祭実行委員を引退したとき、僕は虚無感を感じました。この瞬間が引用部分でいうところの「困難を突破してしまうと」の瞬間です。

なので、不安を感じないためには常に困難の最中に身をおいておきたい。っていうかその方が人間味があっていいですよね。

最下層の生活だろうが、自分の選んだ道ならそれでいい

旅における駝夫の日々といい、シャンでの下男の日々といい、カリンポンでの物乞いたちとの日々といい、デプン寺における初年坊主の日といい、新聞社での見習い職工の日々といい、この工事現場での苦力の日々といい、人から見れば、すべて最下層の生活と思われるかもしれない。いや、実際、経済的には最も底辺の生活だったろう。しかし、あらためて思い返せば、その日々のなんと自由だったことか。誰に強いられたわけでもなく、自分が選んだ生活なのだ。やめたければいつでもやめることができる。それだけでなく、その最も低いところに在る生活を受け入れることができれば、失うことを恐れたり、階段を踏みはずしたり、坂を転げ落ちたりするのを心配することもない。

この考え方も大好き。どんな人生だろうが、どんな生活だろうが、それが自分の意志で選んだ道なのであれば、それが最善。

僕もまだまだ自分で選んだ人生・生活とはいえない状況。やっぱり周りの人とか親族とかの意見を聞いてしまいがちです。

でも段々と世間体とかを気にせずに自分で人生・生活を選択していきたい。だって、そっちの方が絶対に楽しいから。

【※ネタバレあり】西川一三が生まれ変わった瞬間

「君はニシカワだね」
それを聞いて、木村はすべてを話してしまったのだと落胆した。
「そうです、日本人の西川です。」
その瞬間、あの内蒙古の廣野で誕生したロブサン・サンボーは死に、ふたたび西川一三に生まれ変わることになったのだ。

この本の終盤。内蒙古からロブサン・サンボーとして生きてきた西川一三が、本当の身元がバレ、日本人の西川一三に戻る瞬間。

この場面、かなり唐突にきたので、読んでいてびっくりしました。でも、リアリティがあっていいですよね。リアルだからこそ、突然の出来事として書かれているのだなと思います。

他にもたくさん引用したい部分があったのですが、個人的に特に気になった5文を引用してみました。

「天路の旅人」に対する書評

「天路の旅人」に対する書評

いつも通り書評をまとめていきます。

ノンフィクションと沢木耕太郎について


僕がなぜこんなにも「天路の旅人」に魅せられたのか、自分なりに冷静に考えてみました。

そこで行き着いたのが「小説っぽいノンフィクションだから」という結論でした。

僕自身ノンフィクションが特別好きなわけではありません。でも沢木耕太郎が書くノンフィクションはすらすら読めるんです。

なぜなら、小説を読んでいるときと同じように、頭の中に映像が浮かびやすいから。

ノンフィクションだと登場人物のセリフがなかったり、基本的に客観的視点で書かれることが多いですよね。

ですが、沢木耕太郎が書くノンフィクションは「西川一三」の感情や意見が散りばめられながら物語が進んでいきます。つまり、主観性が強いということです。

ちなみに、上記のような主観性が強いジャーナリズムを「ニュー・ジャーナリズム」と言うそうです。そして、沢木耕太郎は一時期「ニュー・ジャーナリズム」の旗手と言われていたそうです。すべてWikipediaの情報笑

沢木はアメリカで起こった「ニュー・ジャーナリズム」の影響を受けているが、小説「一瞬の夏」(1981年)では、プロボクサーのカシアス内藤が2度目の東洋チャンピオンに挑戦する姿を、取材者であり同行者である「私」を絡めて克明に描き、自ら「私ノンフィクション」と呼ぶ方法論に挑んだ。
沢木耕太郎 - Wikipedia

実際、「天路の旅人」も上記と同じ匂いがしますね。

本書冒頭は沢木耕太郎が西川一三を訪ねて取材するところから始まります。そして、その後、西川一三の追体験をしているかのように物語が進んでいきます。西川一三の話や著作、昔の資料だけをもとに書いているとは思えないくらいリアルに。

以上が、沢木耕太郎に対する意見というか感想です。

西川一三について


続いては、本書の主人公でもある「西川一三」について。

第二次世界大戦末期、中国への密偵(スパイ)として入り込んだ西川一三は、最初は密偵という明確な目的がありましたが、戦争が終わってからはとにかく旅を続けたいという欲望に駆られるようになります。そして、日本人であることを偽りながら、ラマ僧としてチベット、ネパール、インドなど様々な地を巡ります。

西川一三は史実に残っているような人ではありません。しかし、昔こんな人が実際に存在したのは事実です。そして、その存在を本書を通して知れてよかった。

本の帯にも書いてあるとおり、沢木耕太郎が「この稀有な旅人のことを、どうしても書きたい」と思うのも納得です。

今の時代では、西川一三のような生き方は限りなく難しいと思います。

だからこそ、本書で追体験する意味があると思います。ぜひいろんな方に読んでもらいたい一冊。
改めて言いますが、2022年個人的No.1書籍です。

「天路の旅人」を読むべき人

「天路の旅人」を読むべき人

最後に、「天路の旅人」についてまとめていきます。

「天路の旅人」を読むべき人

  • 沢木耕太郎ファン
  • 「深夜特急」ファン
  • 旅の意味や醍醐味を知りたい人

繰り返しにはなりますが、2022年個人的No.1書籍。
本当に読んでよかったです。

特に沢木耕太郎の「9年ぶりのノンフィクション作品」かつ「最長」ということで、沢木耕太郎ファンにはぜひ読んでもらいたい一冊。

僕も「深夜特急」「天路の旅人」と読んだので、他の沢木耕太郎著書籍を漁ってみたいと思います。

2022年最後に読んだ本が今年No.1書籍となりました。それが沢木耕太郎著「天路の旅人」です。
沢木耕太郎といえばバックパッカーのバイブル「深夜特急」。その「深夜特急」の面白さに匹敵、いや超えてくるくらいの面白さでした。
それでは、また。

-書評・要約